美の味わい・Eric Rohmer2006年03月20日 06:51


「美の味わい」フランスの映画監督、エリック・ロメールの批評集です。大切しているにも関わらず実は全てを読み終わってはいません。彼の作品の「四季の物語」のなかの「冬物語 / Conte Des Quatre Saisons: Conte D'hiver」に衝撃を受け購入しました。この作品、監督の他の作品に比べ批評はよくないそうですが、初めて見た時受けた衝撃は10年以上たった今でも忘れられません。私にとっては、少し哲学的な印象です。無形のものがあたかもそこに存在するかのように語られていて、その当時(10代終わりか20代の初め)そういうことを語れる世界があることに衝撃をうけ、そういう文化のある土地に行きたいと熱望しました。その後、短期間滞在したフランスで出会った人と、先日10年以上ぶりに話しました。ドイツに住んでいたルーマニア人でフランスに言葉を習いに来ており、お互い拙いフランス語で会話をしていたのですが、10年以上たったいま、彼は当時ドイツの国籍をとりたかったにもかかわらず現在はパリに住み、私は当時全く予想もしなかったドイツに住むことになり、お互いドイツ語で会話をし、とても、とても不思議な気分になりました。これも、ロメールの冬物語的か、と思ったり。何故か最初の作品のあまりの衝撃に他の作品は、批評集と同様避けてとおっていたのですが、そろそろ紐解いてみるのもいいかもしれません。

momo2006年03月13日 01:08


子供の頃に、映画化もされた、「モモ」「はてしない物語(ネバーエンディング・ストーリー)」ご記憶にある方いらっしゃるでしょうか。ドイツに来てあらためて気がついたのですが、作者のミヒャエル・エンデはドイツ人でした。先日友達の家にいったら、読み込まれた「モモ」が本棚に、、、。原語での出会いはとてもとても不思議なものでした。こっちの子供も、あたりまえですが、夢中になっていたんですね。「モモ」は、私自身は一生懸命読んだのですが、一方で、ちょっと不気味だなとも思っていました。こちらに来てみると、その不気味な雰囲気が結構ドイツっぽい!(わるぐち ではありません。笑) こういう子供向きの本にまで、作者の持つバックグラウンドが影響するのだと感じられるのは面白い体験だなと思います。「はてしない物語」のタイトルは「Die Unendliche Geschichte (ディ・ウンエンドリッヒェ・ゲシヒィテ)」。このタイトル、同じ意味だけど、全然違う話に聞こえますね。

ドイツにおける日本文学 その一2006年01月08日 02:17


ある方の依頼で、ドイツの書店における日本文学の位置づけについて調べてきました。ドイツでの日本文学というと3大有名どころが、村上春樹さん、吉本ばななさん、大江健三郎さん、といったところでしょうか。今回書店をぶらぶらすると、平置きされているところが3箇所。そのうち一箇所は大量の村上春樹さんの本、もう一箇所も村上春樹さんの新刊「アンダーグラウンド」と大江健三郎さんの新刊「取替え子(ドイツ語名Tagame Berlin-Tokyo)」、これは他の新刊書と同じところにありました。今はもうアメリカ文学だと思っているアメリカ人もいるという村上春樹さん、ノーベル賞作家の大江健三郎さん、もっともだとも思うのですが、日本には他にも素晴しい作家さんが沢山いるよな、、、とも考える複雑な心境。3番目におかれていたのは、写真中央の芥川龍之介さんでした。いかにもな表紙です。ちょっと前までは、井上靖さんの本等、他にも平置きされているものがあったのですが、中国勢におされぎみ、日本の素敵な本も、もっともっと紹介したいところです。皆さんは、どんな本が好きですか?

ヘルムート・コール Helmut Kohl Erinnerungen1982-19902005年12月09日 23:54

ドイツ人は、本が大好き、、、。アンティークの本屋も沢山あり、壊れた装丁を直す人もいたり、作者を招いての朗読会や、本のCDもよくあります。生活のテンポも、ゆっくりとソファでくつろぎながら読書するという行為がよく似合います。そんなドイツ人が、町中に溢れるクリスマス前、人々は大切な家族にクリスマスプレゼントを探しまくります。本日、街のhon屋を覗いたら、、、もうすっかりクリスマス仕様でした。プレゼントにむいた装丁の美しいhonやら、ワインのhonやら、サッカーのクロニクルや、時間があればもっと眺めたかったのですが、そこは急いでいたので、前から気になっていた本を持ってレジに向かいました。

それはドイツの元首相ヘルムート・コールの回想記です。今回は1982年から1990年まで。ドイツでは有名各誌がとりあえげて非常に話題になっています。EU統合や東西ドイツ統一、ベルリンの壁の崩壊など現代史に残る様々な出来事に直接関わった人物の語る本だけあって読み応えがあるだろうし手元にあってもいいかもしれません、、、。というわけでこの本もクリスマスの贈物にと大推薦されていました。(あ、でもドイツ人は結構嫌いな人も多いみたいですが、、、)私も自分でも読みたいのですが、なにぶんとても分厚いので、日本語版をまって、こちらは知人のプレゼントにするつもりです。それとも30年ぐらいかけてドイツ語で読んでみようかな、、、、?壁の一つも壊れるかも。

サイダーハウスルール@砂浜2005年12月06日 14:23

皆さんこんにちは。マレーシアへの旅行から戻ってきました。日本にとても近いのに、マレーシアに行くのは初めてで、久しぶりの南国の暖かさにひたってきました。南国の暑さ、海や自然の華やかさ、みんな好きなのですが、私が特に好きなのは(ひとくくりにするのは問題あるとはおもいますが)南国の言葉!暖かい国の言葉はどこかふわふわとしていて、気持ちがいい。ドイツ人は寒い時に気合を入れて話をした結果、ああいう発音になるのかなと思わず考えてしまったほどです。

この休暇中に私が読んだのは、ジョン・アーヴィングの「サイダーハウス・ルール」です。これをもっていった理由は簡単明瞭、今まで何度も最初の段階で読むのを辞めてしまっているから、砂浜で読みきろうという魂胆でした。海で遊びつつも無事読了、しました。映画化にもなっていますが、孤児院で生まれた孤児が、自分の人生を見つける迄を、(必ずしも終わりに納得しない人もいると思いますが)(アメリカでの)女性の妊娠中絶問題等を絡めながら描いた小説で、非常にわかりやすい、面白いものでした。読み終わると、何で今まで読めなかったのか、と思うほど楽しんだのですが、理由は多分先の「言葉」だと思います。翻訳の文体は結構すきだったのですが、言葉遊びの多そうな文体で、それに馴染むのに時間がかかったのだと思います。できれば英語で読みたい本だな、、、と思いながら帰りの飛行機の中で最後の一文を読みました。

「オリガ・モリソヴナの反語法」 米原万里2005年11月18日 02:48


あまりよく知らない国、興味がそそられませんか?ソビエト連邦、今はなき国の、社会主義の政治体制下で人々はどんな生活をしていたのだろうか。ロシア語の同時通訳他、ソ連・ロシア関係の報道に関わる、米原万里氏が描いた物語なんとなく手にとって読んでみました。最近賞をとったりする文学作品は暴力的な表現が多かったり、個人の内的世界ばかり描いていたり、あまり読む気がしなくなるものも多いですが、久しぶりに「物語」を読んでいるような気がしました。ノンフィクションとはいえ、かなりご自身の経験も踏まえているのではないかと、ついつい考えながら読んでしまうのですが、知らない国だけに、ストーリー以外の側面にも好奇心をそそられながら読みました。何となく装丁のかもしだす雰囲気にも惹かれたのですが、、、。ドイツに住むと、社会主義体制等、自分の全く想像しえなかった社会に生きてきた人にも多く出会いそういう現実があったのだなと認識をせざるをへません。そんなシリアスな考えを、物語にさっぱりとくるんで読むのもたまにはいいかもしれません。

bookstore2005年10月31日 18:52

温かいホットチョコを飲んだことだし、(情報くださった方どうもありがとう)はりきってディープなhonを選びました。私はこの本を読んだ方に会ってみたい!

さて「ブックストアーニューヨークでもっとも愛された書店」の序文はウディ・アレンです。honが好きなあまりにNYの74丁目で独立系書店ブックス・アンド・カンパニーを開いた女性とそのお店、その文化的な香りに惹かれてやってくる数々の著名な顧客の話、そして閉店迄という作品です。情熱のあまりはじめたお店のため、経営面等でぶつかる問題も多々ありながら乗り越え、魅力ある人々をひきつける本屋の様子を夢中になって読みました。私はまだみていなくて、見るのを楽しみにしているのですが、ウディ・アレンの『世界中がアイ・ラブ・ユー』に、この書店が登場しているそうです。序文でこんなふうに彼は述べています。「映画『世界中がアイ・ラブ・ユー』ではブックス・アンド・カンパニーを撮影した。それはこの店が僕の近所でとても誇りに思えるもののひとつだったからだ。・・・」

そしてこの話には続きがあるのです。私がこの本を買ったのは北青山にひっそりと開店したhon屋でした。小さいながらもそのライン・ナップは、店主ほんとに本好きだな・・・という良質なものばかり。ちょくちょくいける場所に素敵なhon屋ができたのを喜んだのもつかの間、ひっそりと閉店してしまったのでした。あのお店の店主さんが今どこで何をされているのかとっても気になります。

「精霊たちの家」&「愛その他の悪霊について」その12005年10月20日 20:19


想像力とはなにか、、、。まだ私自身は経験したことのない南米の地で書かれた物語には、ことごとく壮大なエネルギーのこめられた世界があります。「百年の孤独」で世界的に知れ渡るガルシア・マルケスの「愛その他の悪霊について」、そして贅沢にももう一冊イザベル・アジェンデの「精霊たちの家」を紹介します。ガルシア・マルケスを初めとするラテンアメリカ文学は時に「マジックリアリズム」と評されますが、現実と幻想的なものが自然に存在し、それが現実の世界のさまざまな矛盾を包み込んで表面的なものだけでは描けない深い世界を現しており、個人的には、とても強い生命力を感じます。様々なものを分析し、分類し、知識として知ることで満足することの強い現在の日本の社会の中で、今たりないのは、知識として知ることではなく、目に見えないものを感じ、現実の矛盾をも受容れて、人間の力を信じて逞しく生きること(盛り上がりすぎですか!?)だと思うのですが、いかがでしょうか。「精霊たちの家」のイザベル・アジェンデはペルーのリマにに生まれた後、母の祖国チリに戻り、ジャーナリストになりますが、叔父であるアジェンデ大統領が軍事クーデターで暗殺された後、ベネズエラに移住、亡命者になる(その後も略歴続く)という壮絶な人生を送っていますが、作品を読んでいても、人間に起きる奇想天外な事柄が、目に見えるものを超えた世の中の理解や、人間への信頼によって、作者に受容れられ、生きる力となっているのではないかと推測されます。このような物語の生まれる土地は一体どんな世界なのか、私にとっての未知の世界への興味は深まるばかりです。(続く・・・いつかわかりませんが、笑)

武満徹著作集1 「ピアノ・トリステ」2005年09月26日 20:43


今回の記事をアップするのに、随分時間がかかりました。実は前回の記事を書いた時から次に紹介する本は「武満徹著作集1」と決めていました。余りにも深く感動してしまった為に、作品を伝える言葉を探すのに時間がかかりました。ドイツに渡ってしばらくの間、ドイツ語をならいながら、日本語の本を浴びるように読んでいた時期がありました。(もともと浴びるよう、、、でしたが!)日本にいる時に、自分に属していると信じていたものが、そうでなかったりと、状況の変化に慣れるのに必死で、どこにいても自分の属しているものは何かを、考えていた時期でした。この著作集は、その頃読みました。ものごとの本質に寄り添った、透明感のある、はりつめた文章は、何かを表現をしようと真剣にとりくんでいる武満氏だからこそ書けるものだったのだと思います。その著作が、へたな作家の方より一つ一つの言葉に重みを持つのは、音楽、文学、に関わらず、揺るぎなくかわらないものを見つめる目があるからなのでしょう。おりしも作品の紹介をどうするか考えていた時に、この著作集に序文を寄せており、著作集の中で作品を紹介されてもいる大江健三郎氏の朗読会に、本当に偶然に辿りつき、驚きました。---今回ここでは著作集の中のたった3ページと一行に記された「ピアノ・トリステ」、音楽の道を探る、戦後2年からの若き日の氏を、ご本人がピアノを通して1961年に振り返る作品を紹介して終わります。

上海ベイビー 衛彗 Wei Hui2005年09月04日 01:17

「上海ベイビー」読み終わった時は、スキャンダルで話題をとる作品なのか、そうでないのか悩みました。中国で大ベストセラーになった後に、発禁処分、享楽的な都市生活と性描写、主人公の奔放さが、若者達に熱狂的に支持され、他方バッシングを受ける。でもこれ、同時期に上海にいた(主人公が性愛におちる対象と同じ)ドイツ人の男性に尋ねたら、「本当にこんな雰囲気だったんだ」というのです。急激な経済成長を背景に、抑圧された社会、政治状況をものともせず、この時期、このタイミングで、この国で(だって東京で書いても誰も驚かない。)「上海ベイビー」を書いた衛彗Wei Hui は、まさに「時代の子」なのでしょう。その時代にしか生まれ得なかった人々(戦後の石原裕次郎とか、昭和の美空ひばりとか)の輝きは尋常じゃありません。ところでこの本、英語訳のみならずドイツ語訳もでていました。(十数カ国語に翻訳されているらしい。)この本が中国で発売された翌年に、とある上海の会議に参加した筆者は、昭和50年代のようなデパートの中身と、威光を放つ新しいグランドハイアットホテルとのギャップに驚きましたが、今はもっと面白くなっているんでしょうね。